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形から心に そして生活の中へ
表千家の13代家元、即中斎宗匠が茶道を習う私たちへ送ったメッセージがあります。茶道を始めようと考えている皆様に是非知って頂きたく、今回ご紹介致します。
13代千宗左 即中斎
即中斎宗匠は1901年に京都に生まれました。
12代千宗左の次男でしたが、兄の不言斎が早くして亡くなっているため、1937年に家元を継いでいます。
表千家の家元は代々「千宗左」を名乗り、即中斎宗匠は13代目。
財団法人「不審庵」を設立し、また表千家同門会を発会するなど、現在の表千家の礎を築き、またいくつもの名著を後進へ残しました。
1979年逝去。
今回ご紹介するメッセージは昭和34年発行の『茶の湯全書』から引用するものです。
「稽古場へ入れば、俗事はすっかり忘れてしまう。正座して、もの静かな中でいただく一服のお茶のおいしさ。一生懸命にお点前の稽古をし、なかなか思い通りにいかなくても、ひたむきに心を打ち込んだ後の心ちよさ」というのが、お茶を習う方々の感想です。
お茶は、形を整えて心に入るというのが、その建前です。何度も何度もお点前の稽古をくり返すうちに、おいおいお茶がわかってくるようになるのです。お茶が身につくまで覚えこむには、この習い方が是非とも必要なのです。
「お茶が身につく」というと、なんだか変でしょうが、こうしてお稽古を続けていると、お茶のよさ、お茶の楽しさ、お茶の心のむずかしさ、利休居士が考えた、お茶の心がわかって参ります。そしてそれが稽古場だけでなしに、日常の家庭生活のうえにも、社交のうえでも、お茶によって鍛えられた心が、教えられた礼儀が、また美しい動作が、自然ににじみ出てまいります。これが「お茶が身につく」ということです。
私の家は「表千家」で広く知られているように、利休居士以来代々その後を受け継いで今日に至っております。このように長い歴史をもち、古く生まれた茶道ですが、それを学ぶ心は、常に新しくあることが大切です。現代に生きる新しい心で、お茶を学んでいただきたいのです 。
それでこそ、お茶も本当に身につくことだと思います。
ここまで
数十年も前の言葉ですが、長い歴史を持つ茶道をまず頭で理解しようとしても、なかなか難しいものでありそうです。
よくわからないながらも、それに向き合い、ひたむきに取り組むうちにその本質がわかってくる。
そしてそれは長い時間をかけ、今現在の私たちの生活に息づき始めることを説いています。
そういえば、2018年公開の映画「日日是好日」の中にもそんなメッセージがあったことを思い出しました。
世の中にはすぐわかるものと、すぐわからないものの二種類がある。
さらに、茶道を学ぶ心は常に「今」になければならないと、即中斎宗匠は私たちに語りかけます。
情報に溺れる私たちは、何かと先ず難しく考えがちなのかもしれません。
静かに心を整えて畳に座る。
その先の世界は、その先にきっと見えてくるでしょう。