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今はNG!! 煙草でもてなす意外な習慣
新型コロナウイルスの感染拡大が大きく報道される中、2020年4月1日に改正健康増進法が全面施行され、このニュースも世の中の注目を集めました。
山桃庵のご近所、千葉県千葉市では、同時に受動喫煙防止条令も施行されたそうです。
喫煙愛好者は益々肩身の狭い思いに悩まされるこの頃です。
喫煙が嫌われる昨今ですが、茶席には今でも煙草盆が据えられています。
現代では見る機会もない煙管(キセル)や、灰型が美しく整えられた火入れが煙草盆に載せられ、お菓子と共に客席へと運ばれてくるのです。
今では茶席で煙草に火をつけることはありません。
それでも流派を問わず「薄茶席」と「寄り付き」、「腰掛け待ち合い」に煙草盆を据える習いが茶道には残っています。
煙草は1500年代後半、ヨーロッパとの交易が盛んになった時代に日本にもたらされました。
そして、1600年代慶長年間半ば過ぎに喫煙の流行が始まったとされています。
時を同じくして、茶席では客のくつろぎのため、もしくは亭主からのもてなしとして、煙草盆が出されるようになりました。
この習慣が今日の茶道にも引き継がれているのです。
現代では喫煙にもてなしとしての実利面はなくなりました。
それでも、茶席の雰囲気を高める装飾品として、煙草盆を客席に据えるその文化は大切に受け継がれています。
茶の湯(茶事)最大のもてなしは濃茶席で点てられる一椀の濃茶にあります。
この濃茶席は殊に厳格で、ピンと張り詰めた静寂の世界。
主客双方が一つの茶碗に全神経を集中させる、一座建立の境地です。
その一方、和やかな薄茶席の雰囲気は、例えて言えば現代の喫茶店。
厳格な濃茶席とは異なり、薄茶席は客同士の会話が弾むフランクな空間です。
この薄茶席の中で座蒲団や干菓子と共に、煙草盆が亭主から客へと供されてきたのです。
煙草をプカーっと燻らしながら、何気ない会話を弾ませる。
抹茶とコーヒーの違いはあるにせよ、今も昔も変わらない人々の日常を茶席に感じる時、茶道が少し身近に感じてきませんか?