灰の染め出し

歳時記:やまももの木

5月の連休を前に、稽古場は風炉の季節の準備が進む時期。
炉を閉じて畳を替え、炭を風炉用のものに一新し、風炉釡の準備をします。
気候も本格的に和らぎ、清々しい春風になんだか気持ちも高まる季節です。

そして炉を閉じるこの時期は、茶家では灰づくりが始まる季節でもあります。
炉から上げた灰をふるいにかけ、燃え残った炭を綺麗に取除く作業から始まり、たっぷりの番茶を煮たて、その灰に煮汁をかけて練りこみます。
次の秋が来るまで、暑い夏を超えて数ヶ月寝かせることで、灰は番茶の成分(タンニン)を吸込み、絹のような手触りへと変化していくのです。

秋には番茶で染めた灰を再びふるい、状態を見て炉用の灰と風炉用の灰に分けます。特に風炉用の灰は天日で干してさらに細かくふるい、乳鉢で丹念に摺り込んで粒子を潰していきます。

炉用の灰は霰状の粒子に整えられ、炉中で炭に焼かれて冬を超し、春になると再び番茶で練られて秋を待つのです。

毎年このような作業を繰り返し行うと、灰はきれいなビワ色に染まります。
何年も何年も同じサイクルを繰り返し灰を育てる。
灰は茶家の歴史を物語っています。

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