初心者の茶道#08:飲茶のすすめ

さあ茶道を始めよう
  1. ホーム
  2. さあ茶道を始めよう
  3. 初心者の茶道#08:飲茶のすすめ

古の昔から愛されてきた飲茶

栄西禅師(1141~1215)は、今から800年ほど前の鎌倉時代初めに「喫茶養生記」を著し、お茶は〈養生の仙薬〉であり〈万病の薬〉であると、広く飲茶を提唱しました。
そして、眠気を取る、酔いを覚ます、気分を明るくする、消化を助ける、思考を高める、脚気を防ぐなどなど、16種類もの茶の効能をあげて紹介しています。
さらに、飲茶は養生の側面からだけではなく、修身の道でもあるとし、栄西は〈茶徳〉についても説いています。
「喫茶養生記」 によって説かれたこれらの茶の効能を、私たちは長年体験の中で知り、昔から茶を体によい飲み物として飲み続けてきました。

しかし、お茶が健康に良い飲み物であると科学的に証明されたのは、1980年代に入ってからのことでした。
今から35年ぐらい前のことです。
1984年の岡山大学の奥田拓男教授に続き、1985年には国立遺伝学研究所の賀田恒夫教授によって、茶カテキンには微生物の突然変異を抑制する作用があることが証明されたのです。

現代になって明かされた飲茶の効能

この研究が、お茶カテキンの抗癌作用研究の先駆けになりました。
以来、茶の成分と機能の研究が進み、茶カテキンには幾種類ものポリフェノール、抗酸化ビタミンが豊富に含まれていることが明らかになったのです 。
そしてこの成分に、強い抗酸化作用があることも証明されました。
抗酸化力には癌を防ぐ作用、血管系疾患を抑える働きなどがあり、様々な生活習慣病の予防につながる重要な機能を有することも明らかになりました。

また、お茶の飲用と疾病との関係を調べる疫学的研究も進み、緑茶生産地での癌死亡率は、他府県に比べて 著しく低いことが分かっています。
緑茶の飲用量の多い人(1日10杯以上)のがん発生率は、飲用量の少ない人(1日3杯以下)よりも 明らかに低く、特に肺癌、大腸癌、膵臓癌に対して強い予防効果があることも、疫学的研究によって裏付けられました。
さらに、平均癌発生年齢については、緑茶摂取の多い人ほど遅くなることなどがわかっているそうです。

現代の科学によって、お茶は〈養生の仙薬〉の飲料であることが解明されたわけです。

緑茶成分とその機能性
不溶性成分(70~80%)

食物繊維
便秘防止大腸がん、心疾患の予防

タンパク質(約24%)(グルテリン)
栄養素

β-カロテン(13~29㎎%)
プロビタミンA(ビタミンAの供給源)、抗酸化(活性酸素、ラジカルの消去)、抗がん(肺、皮膚がんなど)、心疾患、白内障などの予防、免疫能増強

ビタミンE(25~70%)
抗酸化(ラジカル消去、過酸化脂質の生成抑制)、ニトロサミンの生成抑制、抗がん(消化器系、肺、乳がんなど)、糖尿病、心疾患、白内障の予防、免疫能増強

クロロフィル(0.6~1.0%)
がん予防、抗突然変異、抗潰瘍、消臭

ミネラル(不溶性)(2~3%)

水溶性成分 (20~30%)

カテキン類(10~18%)
抗酸化、抗突然変異、抗ガン、血漿コレステロール低下、LDL酸化防止、血圧上昇抑制、血小板凝集抑制、血糧上昇抑制、抗菌、抗虫歯、抗ウイルス、腸内フロラ改善、抗アレルギー、痴呆防止、抗炎症、抗潰瘍、解毒、消臭

複合タンニン(TNDs)(0.4%)
抗酸化、抗ガン

フラボノール類(0.6~0.7%)
血管壁強化、抗酸化(ラジカル消去、LDL酸化防止)、抗ガン、冠状動脈心疾患予防、肝機能改善、消臭

カフェイン(3~4%)
中枢神経興奮、眠気防止、強心、利尿、代謝促進

複合多糖(0.6%)
血糖上昇抑制(抗糖尿)

ビタミンC(150~250%)
抗壊血病、抗酸化(ラジカル消去、LDL酸化防止)、ニトロサミンの生成抑制、抗ガン(胃ガン等)、かぜの予防、白内障予防、抗アレルギー、免疫能維持

ビタミンB2(1.4%)
口角炎予防、抗酸化(過酸化脂質の生成抑制)

テアニン(0.6~2.0%)
血圧降下、脳・神経機能調整、肝機能改善

γ-アミノ酪酸(GABA)(0.1~0.2%)(ギャバロン茶)
血圧降下、抑制性神経伝達物質

サポニン(0.1%)
抗喘息、抗菌、血圧降下、抗アレルギー

香気成分(1~2%)
アロマテラピー効果

食物繊維(可溶性)(ペクチン)(3~4%)
胆汁酸排泄促進、血中コレステロール低下、肝機能改善

ミネラル(3~4%)
F:虫歯予防
Zn、Mn、Cu、Se:抗酸化、ガン予防

表出典
茶の湯文化学会機関誌7号
論文:茶の効能 授村松敬一郞(静岡大学名誉教)

上記の表から茶の成分の7~8割が不溶性成分
残りの3~2割が水溶性水分です。
お湯に成分を溶かし出して飲む緑茶は、不溶性成分が茶殻に残ってしまうため、その摂取が困難です。
これに対し、抹茶は茶葉をそのまますり潰し粉体に精製したもの。
お湯に粉体を攪拌して飲む抹茶は、不溶性成分と水溶性成分のすべてを摂取できるので、理想的な茶の飲用方法と言えます。

抹茶には苦いイメージがあります。
でもその香りや舌ざわり、適切な温度、茶の鮮度、そして何よりも茶を点てる人の心や技量によって抹茶の味は驚くほど違ってきます。

さぁ、茶道を始めよう。

甘い和菓子に頼らずとも、皆が抹茶の味に甘味深味を感じるようになってきます。
それは、もしかしたら茶の湯の修練で得た心の豊かさなのかもしれません。

SNS - All pages are welcome to share.